BCクロカン概説(4)~BCクロカンの長所・短所

まほろば倶楽部でBCクロカンを体験し、気に入ってMyスキーを購入された方が少なからずいらっしゃると聞いています。
皆さんBCクロカンに魅力を感じている点は様々だと思いますが、ここでは、私が感じているBCクロカンの長所と短所を挙げておきます。

<長所① 軽快な歩行>
BCクロカンの第1の長所は、歩きの軽快さです。
ステップ板に革靴という組み合わせのテレマークもなかなかに軽快ではありますが、それと比べても格段に軽快です。
足回りの重量の軽さ、クロカンビンディングによる靴の上がりの軽さ、それに加えて、BCクロカンだと、歩くときに「ピュッ」と板が走る感覚があります。
私はこの「ピュッ」がたまらなく好きです。

<長所② 登りが楽>
この「登りが楽」というのには、2つの意味があります。
1つは、スキーを履いての登高が楽だということ。
これは、歩きが軽快であることと同じ要因から来るものです。
ただし、登りの負荷は同じようにかかるので、平地歩行に比べると、革靴テレマークとの差は小さくなります。
もう一つの意味は、スキーを脱いでの登りが楽だということです。
板が軽いので、板を持ったりザックに付けたときの負担が小さい上に、靴も普通の運動靴に近い作りのため歩きやすいのです。
登りが楽だということによって、良い斜面を求めて移動したり、気に入った斜面を繰り返し滑ることが苦にならなくなります。

<長所③ 予想以上の滑降性能>
以上のような軽快さはBCクロカンの最大の魅力ですが、しかし、そのために滑りが極端に難しくなってしまうとしたら、私はこれほどBCクロカンにはまることは無かったでしょう。
BCクロカンは、その軽快さの割に、予想以上の滑降性能を持っているというのが大きなポイントです。
BCクロカンはクロスカントリースキーとテレマークの中間的な用具を使いますが、歩行の性能はクロスカントリースキーにより近く、滑降の性能はテレマークにより近い、と感じます。
しっかりしたテレマークの技術があり、雪の条件さえ良ければ、テレマークで行動していた相当の範囲をBCクロカンでカバーすることができます。
おそらく、春のザラメ雪であれば、山スキー/テレマークの中級レベルのツアーコースを踏破することはできると思っています(まだ実践はしていませんが)。

<長所④ スキーシーズンが長くなる>
長所②から派生する長所として、スキーシーズンが長くなる、つまり遅くまでスキーができる、ということが挙げられます。
板を担いでの移動が楽なので、遅くまで残っている残雪を求めて登山道を登る、ということがさほど苦になりません。
また、たどり着いた先で登って滑ることを繰り返すのも、山スキーやテレマークよりBCクロカンの方が楽です。
その結果、テレマークでは行く気がしないような状況でも、BCクロカンなら行ってみようか、という気になります。
まあ、この点は人によって感じ方が違うと思いますが、私はこのように感じています。

<長所⑤ スキーが上達>
私は、BCクロカンを始めてから、テレマークも上達したように感じています。
細革ではちょっと嫌だな、と感じるような悪雪が、以前よりうまく滑れるようになった感じです(本当に嫌な悪雪は相変わらず滑れませんが)。
BCクロカンは道具によるサポート力に頼ることができないので、より正しい(?)滑りが要求されるためでしょうか。
もしかすると、BCクロカンを始めてからはオフピステを滑る比率の方が高くなったので、単純に様々な雪の条件に鍛えられただけかもしれませんが。

(長所⑥ クラストに強い?)
これは仮説です。
私は大変クラストが苦手です。
ところが、BCクロカンでツアーに出た際、「この雪質では細革だったらうまく滑れないんじゃないか」と感じるクラスト気味の条件のときに、意外とこなせてしまったりします。
で、BCクロカンの方がクラストに強いのでは、と思ったわけです。
しかし、同じ斜面を細革とBCクロカンで比べて滑ったことがあるわけではないので、本当のところは分かりません。
BCクロカンのスキー上達効果のおかげで、テレマークでも滑れるようになっているのかもしれません。
なお、モナカ雪になってしまうと、私の技術ではBCクロカンでも全く滑れません。

<短所① 滑降に技術が必要>
長所②は予想以上の滑降性能としましたが、BCクロカンで滑るには、相応のスキー技術を必要とします。
特に、プラスチックのブーツしか履いたことのない方は、トレッキングブーツに毛が生えた程度のBCクロカンブーツで滑ることにかなりのギャップを感じられるかと思います。
テレマークである程度の経験のある方からも、BCクロカンは難しいと聞きます。
私は細革テレマークから割とスムーズにBCクロカンに移行できましたが、細革テレマーク自体難しいと言われることもあるので・・・。
どのくらい難しいと感じるかは本当に人によりけりだと思いますので、とにかく、用具を購入する前には一度レンタルで体験したほうが良いでしょう。

<短所② 堅雪に弱い>
BCクロカンは、テレマークに比べてエッジが効きにくく、アイスバーンには弱いです。
特に、センター幅が広めの板は、非常に弱いです。
池の平湿原から湯ノ丸スキー場への林道下りは、通常であれば漕ぎたくなるくらいの緩傾斜ですが、センター幅68mmのフィッシャー・アウタバウンズクラウンを履いてアイスバーンのコンディションの中を下ったときには、制動が効かず怖い思いをしました。
ブルーアイスのような最悪の状態ではなく、滑る前には困難な雪質とは思わなかったので、驚きました。
また、湯ノ丸スキー場の、テレマークであれば普通にエッジが効くような堅い圧雪斜面でも、アウタバウンズクラウンだと十分にエッジが効かずかなり落とされる感じで、初級コースなのにオタオタと滑ったことがあります。
私は3/4エッジのカルフ・サルスティスも持っていますが、フルエッジではなくても、センター幅の細い(55mm)サルスティスの方がエッジの効きは良いようです。

この記事へのコメント

雪くじら
2011年09月17日 17:21
はじめまして。私は九州のバックカントリースキーヤーですがこのページを発見して、楽しく拝読させていただいています。数年前にBCクロカンと出会い、前のシーズンからテレマーク同様力を入れてやっています。
長所短所を読んで、なるほどだと思います。私なりには短所をもうひとつ付け加えさせていただきます。それは、私にとっては10Kg以上のバックパックを背負って滑るのが難しいことです。実際に10kgのパックで滑ったことはありませんが、5kgくらいのパックで滑ったとき、空身で滑るリズムと軽快さが損なわれていました。5kgなら慣れてくると思いますが、10kgを超えたときは自信ありません。私の場合ワンデーツアーでも10kgくらいのパックを背負うのは普通ですので、BCクロカンの利用は避けてしまいます。この春白馬乗鞍のロングコースのツアーで使用を検討したのですが上記の理由でやめました。あと、長所のクラストに強いというのは道具の特性というよりすべい方のほうに原因があるような気がします。
雪くじら
2011年09月17日 17:24
正誤
最後から2行目「すべい」→「滑り」
Seki
2011年09月17日 22:43
雪くじらさん、こんにちは。
九州の方にご覧いただいているとは驚きです!ネットなんだから当然といえば当然ではありますが。
私の場合、ご覧の通りテレマーク/山スキーの日帰りツアーコースにBCクロカンで行ったりしており、装備もテレマークの時と同じものを背負っていますが、それほど支障を感じたことはありません。重さを量ったことはありませんが、一応冬装備なので、10kgくらいにはなっているでしょうか。
ただ、来シーズンはBCクロカンで泊まりのツアーに行くことを夢想しておりまして、その時には事前に重いザックで滑る練習をしてみなければ、と思っています。

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