★2012.05.03~06 細革/GW立山(後編)

遅くなりました。
立山ツアー、後半です。

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<5日>
前日夕方からの雪に加え、夜半からは暴風が吹き荒れた。
うっすら傾いたテントの低い側に陣取った私は、上からずり落ちてくる息子の寝袋によって壁際に追いやられ、雪でつぶされた上に風で煽られたテントの側壁が私の寝袋を押してくる。
入山前の予報では、5日からは徐々に高気圧に覆われ好天に向かうとなっており、その後もずっと5日は晴れマークだったのだが、昨日午後の山岳天気予報で雨と雪のマークに変わってしまった。
この夜は、テントと天気の心配で、しっかり眠った時間はほとんどなく、目をつぶって時間が経つのを待つ、という感じになった。
それでも、風は一向に止まなかったが、湿った雪がフライを叩く音は次第に聞こえなくなった。

空が白み始めた4時過ぎ、トイレのためテントを出てみると、スネ下くらいまで潜る積雪。
何と、スキーとビンディングが厚い氷に覆われてガチガチに凍り付いている。
んー、これが融けないと出発できないという問題も。
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しばらく経ってから、この状況下で熟睡している幸せな息子を叩き起こす。
食事をしているうちに、また雨がテントを叩く音が鳴り始め、気分が沈む。
しかし、変わりやすい山の天気のこと、山岳天気予報はそれほど正確にはできないし、下界(富山)の予報では、朝方まで雨で、その後天気は回復すると言っている。
今回は、この日の好天に期待して入山したようなもの。
何とか回復して欲しい。

願いが通じたか、雨はそれほど長く続かず、7時ころには富山側に青空も垣間見られるようになる。
スキーの氷も気温上昇で緩み、スコップの柄で叩くと案外簡単に割れて剥がれ落ちた。
これならいける。

早速出発準備。
目指すは、今回のメインイベントと考えていた御山谷。
7:50にテン場を出発。
ブル道を外れて一ノ越への登りにはいると、表面が厚く凍ったクラスト状態。
表面がややテカっていて、シールの効きが非常に悪い。
しかも、息子は私のようには登れない。
例年直登してきた斜面を、一歩一歩スキーを強く叩きつけて氷を割りながら、緩めの斜登高で登る。

室堂から一ノ越に向かう道(トレース)には、この好天を待っていたかのように、沢山の登山者が数珠繋ぎに歩いている。
あの耕されたトレース上の方が歩きやすいのは明らかだが、そこまで登ること自体が大変だ。
一ノ越にかなり近づいたところでトレースに合流。
やはりトレース上は登りやすいが、基本的に登山者向けに作られているのか、部分的にはかなり急なところを直登するようになっていて、先行のスキーヤーが結構苦しんでいる。
登りながら、息子にシール登高のツボを伝授。
これが思った以上に効果があった。
苦労しつつ、10:20に一ノ越着。
例年なら1時間20分くらいで登っているところを、2時間半もかかってしまった。

一ノ越はすごい風。
一ノ越山荘外のトイレ小屋は、雪で埋もれて使えなかった。
例年は使えたように思うのだが。
一方で、周りの登山者が、今年の御山谷は下で渡渉が必要らしい、と話しているのが聞こえてくる。
意外だ。

強風で長居はしたくない。
シールを剥がして滑降に入る。
御山谷は南面なので、登ってきた北側のようには凍っていないだろうが、この時期の降雪直後なので、かなりの悪雪を覚悟していた。
おそるおそる滑り出すと、ん、意外と滑りにくくないぞ。
それどころか、少し下ると、思いもしていなかった軽さの新雪で、一気にボルテージが上がる。
もちろんパウダーとは言い難いが、3月中下旬の上越の降雪直後、といった感じか。
途中から次第に雪が重くなり、やがて思っていたとおりの重~い湿雪になったが、広大な御山谷の滑りを存分に楽しんで、あっという間に大岩に到着。
御山谷は今までに2度滑っているが、いずれも山行最終日にテント装備の重いザックを背負っての滑りだったので、楽ではなかった。
今回初めて普通(?)に御山谷を滑ることができ、あらためてそのすばらしさを感じることができた。

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谷の中も風は強く、大岩の陰に隠れてシールを外し、エネルギーを補給したら、登り返し。
北側とうって変わって、南側は実にシールが良く効く雪。
斜登高の登高角度も高く取れる。
が、息子はどうも慣れないキックターンに難儀している。
ジグザグに登るのとまっすぐに登るのとどっちが好きか、と聞くとまっすぐの方がいいというので、直登に切り替える。
メローな印象の御山谷も、こうして直登してみるとなかなかの斜度。
他のスキーヤーはジグザグで登っている。
しかし、息子は一ノ越の登りでコツをつかんだのか、直登で上手く登る。
こうなると速い。
予想をはるかに上回る、1時間で登り返し完了。

御山谷の登り返し
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一ノ越からは、浄土山側の斜面を絡めながら、高度を落とさないように室堂方面へ。
最後に室堂山荘前の斜面を滑ったら、食事のため室堂ターミナルへ。
ターミナルは観光客でごった返しており、ちょうど昼時だったのでレストランは入れないのではないかと心配したが、入ってみるとホテル立山のレストランはかなり席数が多く、余裕だった。
今日は白エビ唐揚げ丼+ビール。美味。

食事の後は、もうシールはいい、ステップで遊びたい、という息子の希望もあり、以前まほろばツアーに飛び入り参加したときに連れて行ってもらった、国見岳裏のカールに行ってみる。
しかし、風がものすごく強く、雪は超重雪。
2~3本で撤退。
戻って室堂山荘前の斜面を1本、口直しのために滑ってからテントに戻った。

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<6日>
下山日の今日も、天気は悪い方に向かうという予報。
幸い朝方は天気がもって、雨の中でテントを撤収するという事態は避けられた。
テン場に別れを告げ、シールを貼ってブル道を登り、室堂山荘前に大ザックをデポ。
時間に余裕があるので少し遊んでいこうと、空身で展望台に向けて登り出す。
シール登高の練習とばかりに、また直登で登る。
急斜面にさしかかったところで、雪が降り始めた。
意外と早く来たな、と思っていたら、あっという間に風雪が強まり、吹雪に。
急斜面の途中なので登り続けるしかないが、あいにく息子が限界斜度になってしまってバックスリップに苦しみ、もたついてしまう。

ちょっとそこまで、という気分だったので、空身である上に、薄いソフトシェルにペラペラのウインドブレーカーという軽装。
湿った吹雪に対してあまりにも無防備だ。
一息つけるところまで登ったら、ふるえながら急いでシールを剥がし、全く視界が効かない中を慎重に滑り下りる。
ちょうど山荘の正面の斜面だったので、戻れないということはないだろうと思ったのだが、なかなか山荘が見えてこない。
GPSで確認すると、山荘よりも一ノ越側の斜面に向かっていた。
そのまま滑っていたら、山荘を過ぎて谷の方に下りてしまっていただろう。
GPSだけは首からぶら下げていて、本当に良かった。
もしこれで道に迷ったりしていたら、典型的な遭難のパターンだ。
ザックに十分な装備を持っていても、意味がない。
こういうこともあるのだと学ばされた。
方向を修正して無事山荘前に戻り、ザックを回収して、急ぎ室堂ターミナルに逃げ込む。

それにしても、最後にまた吹雪とは。
元来、GWというのは天気が安定している時期のはずで、私はこれまでに3回立山に来ているが、雨に降られたのはたった1日、御山谷を黒部湖畔まで滑り終えた後に弱い雨が降り出したことがあるだけだ。
私のGW立山のイメージといえば、春の陽光に照らされた白い山々に囲まれてのスキー、それを体験させてやろうと息子を連れて来ることにしたのに、今回のこの天気…。
この前の阿仁乳頭も強雨だったし、夏山も含めて、本当に息子と一緒に山に行くと天気が悪いことが多い。
ここまで来ると、「雨男」というより「嵐を呼ぶ男」か。

室堂ターミナルは、昨日の混雑が嘘のような、のどかな雰囲気。
連休最終日にここまで来る人はあまりいないのだろう。
心配したロープウェーやケーブルカーの乗車待ちもなく、スムーズに扇沢までたどり着けた。

後は、立山下山の黄金パターン、扇沢→大町温泉→温泉バス停前で岩魚天ぷら+地酒+蕎麦→大町駅。
この下山後の蕎麦屋でのひとときが、超しあわせ(笑)。

大町駅から特急に乗ると、ほどなくして青空と太陽が。
室堂では吹雪に襲われ、大町駅までは雨が降ったり止んだりだったのに、お前が電車に乗った途端に快晴か。
さすがは雨男、などと息子に話しながら、東京に帰った。

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