★★★2013.11.22~24 BCXC・細革/立山

まほろば倶楽部のツアーに参加し、立山に行ってきました。

2日目、私たちに最高の滑りを楽しませてくれた新雪は、一方で雪崩の被害を生みました。
亡くなられた方のご冥福をお祈り致します。

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2013年11月22~24日 立山

装備:BCクロカン(板)アウタバウンズクラウン(靴)Xadv7
    細革(板)ポーラスター(靴)ビンソン

11月は毎週のようにサッカーの公式戦が入っていたのだが、幸運にも23・24日の連休だけ空いた。
22日金曜に休みを取って、2泊3日でまほろば倶楽部の立山ツアーに参加できることになった。
奥様は先週友人と沖縄に「女子旅」に行っておられるので、今週は私を大変気持ちよく送り出して下さる。
こんな好条件が揃うことはなかなかない(笑)。


<11月22日>
「レール&スキー」派の私は、木曜夜に出発し松本で前夜泊する。
ネットで見つけた、滞在6時間以内の条件付きで1泊3700円のプランを利用。
遅く着いて翌朝6時の始発に乗る私にはぴったりのプランである。

前夜松本に着いた時点でその寒さにちょっと驚いた。
朝も寒く、松本駅の気温表示板には0℃と表示されている。

扇沢に着くと、秋田・湯沢から参加の黒森の子ジカO氏に遭遇し、一緒に室堂に向かう。
気がつけば、他にもまほろばツアーに参加される方々の姿が見られる。

今日は平日だが、アルペンルートは予想以上の混雑。
富山側の高原バスが降雪のため運休している影響もあるのかもしれない。
それでも、途中ケーブルカーとロープウェーは第2便になってしまうも、最後のトロリーバスでは追いついて始発に乗ることができ、最速で室堂に到着。
雪とガスの中をスキーで歩き、室堂山荘に入る。

本日到着組のツアーは午後からのスタート。
吹雪とまではいかないが雪が降っており、ホワイトアウトとまではいかないがガスっていて視界はかなり悪い。
遠出はせず、室堂山下部、室堂山荘前の通称(というよりまほろば倶楽部の符牒?)「Bゲレンデ」を回すことになる。

今回のツアー要項では、板はステップソールと指定されている。
私は、細革とBCクロカンの2本立てで準備してきた(本当はBCクロカンまで射程に入れた要項だったのか微妙ではあるが…)。
ステップソールで繰り返し滑るパターンで、しかも新雪と来れば、BCクロカンの方が楽しい。
ということでBCクロカンを選択。

雪は4日前から降り続いており、ライブカメラで観察していた様子からしても相当な新雪が積もっているはずだが、今回の雪は粒が細かく、スキーで踏むとミシッと締まる感じがあって、それほど深く潜らない(この雪が、翌日「魔法」を生むことになる)。
おかげで、斜度があまりないBゲレンデを浮力の小さいBCクロカンで滑ってもよく滑る。
雪はもちろんごく軽い新雪で、気持ちよい。

ただ、ガスで暗く斜面の起伏は全く見えない。
そのため、突然ドンと落とされたり、吹きだまりに突っ込んで前のめりになったりするが、これも練習にはよい。

それにしても、まほろば倶楽部の皆さん、特に11月立山ツアーに参加するような方々は、本当に上手い。
皆さん次第に滑り出し地点が上がっていくのは自然な流れ(かくいう私が率先して上げていく方なのでありますが)。
思い思いに登り、滑って、この悪天候の中での足慣らしとしては十分な内容で初日を終えた。

そして風呂の後、早くも4時から夜の宴は始まったのだった…。


<11月23日>
2日目は高気圧に覆われ好天の予報である。
朝4時に目覚めて窓の外を見ると、昨日は全く拝めなかった称名川対岸の山々が月明かりに輝き、空には星がまたたいている。
やった。
思った通りの「THE DAY」という奴である。

しかし、石木田さんも経験がないという、4日間も連続で高原バスを終日運休にさせた降雪の直後である。
積雪安定性がどうこうと言うまでもなく、これだけの降雪があった以上は、雪崩の危険性は高いと考えなければならない。
それを考慮した上での行動となることがミーティングで確認される。

私は引き続きBCクロカン。
早朝山荘を出て、まずはシールを着けて室堂山を目指して登り出すが、下見で先行した石木田さんからの指示で進路変更。
浄土山北面のシュートに向かう。

天気は快晴。
朝日を浴び始めた山々が美しく、遠く眼下には富山の市街が見える。

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1本目のシュートは、まだだれも滑っていない完全なノートラック。
これを順番に滑っていく。

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まほろばパーティーはガイドの石木田さん、阪谷さんを含めて10人だが、最後の方に滑った私でも、トラックを重ねずに滑っていくことができる。
やはり新雪にはBCクロカンが最高である。

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さらにもう一段下まで2本目を滑る。
これは途中バランスを崩す場面があって、それ以降の流れも悪くなりやや残念な内容。

2本目。石木田さんのシュプール。
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そこから再びシールを装着し、一ノ越へ。
途中から浄土山寄りのメロー斜面に向かう。
当初はそのメロー斜面を滑る予定だったが、あまりコンディションがよくないということで、大きくトラバースして一ノ越下の大斜面に移動する。

大斜面には先行パーティーのトレースがあったが、この斜面の大きさからすれば、端っこをちょこっと汚されている程度。
眼下には、まだ広大なノートラックの斜面が広がっている。

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この大斜面を、まずはガイドの石木田さんが滑っていく。
大斜面の下までノンストップ、かなりのロングランである。
続いて、今回の紅一点、すばらしくエレガントな滑りをするKさんが滑り出す。
次は私だ。

最高のノートラック斜面だが、果たして、この新雪で、これだけ長い距離を、破綻なくノンストップで滑りきれるだろうか。
緊張のスタート。

が、わずか2~3ターンで、その不安は杞憂だったことが分かる。
スキーは私の思うまま、自在に回ってくれる。
この「締まる新雪」は、ある程度の深さで柔らかくスキーを支えてくれて、底なしパウダーにありがちな急に沈んでしまうということがない。
急すぎない斜度も絶妙で、必死になる必要もなければ、緩すぎてしまうこともなく、気持ちのよいスピードを保ってくれる。

足に馴染んだ柔らかいBCクロカンブーツは、スキーを履いていることを忘れさせる。
どこも力む必要がなく、完全にリラックスして、雪の中を落ちていく。
もはや興奮することすらなく、無の状態。
雪と一体になったような感覚。
また、高度感のある斜面を落ちていくのは、宙を飛んでいるようでもある。
そのまま下まで、一糸乱れずに滑りきった。

今まで経験したことのない、完璧な滑り。
ここ数年、BCクロカンでオフピステをたくさん滑ってきたことで、私の技術が向上していることは確かである。
しかし、決してそれだけではこうはならない。
この雪、斜面、そして用具が絶妙に調和して、魔法を生み出したとしかいいようがない。
決して「感激のオーバーヘッド」とかではなく、傍から見れば、易しい斜面の浅いパウダーを滑っているだけに見えるかもしれないが、これほどの感覚は今後もそうそう経験できるものではないと断言できる。
もう、この一本だけで、今回のツアーは★★★に決定なのである。
このタイミングでここに連れてきて下さったガイドの石木田さん、阪谷さんに感謝するのみである。

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この後は斜面を探しながらステップで移動し、もう1本下へ滑ったら、シールを着けて室堂山荘に帰還。
午前は終了。

が、この時点で、昨日滑った山荘前のBゲレンデはノートラック。
こうなると午後の全体行動まで我慢できない。
少し休み、食事をしたら、一人でBゲレンデに向かう。

ワクワクしながら山荘を出て、Bゲレンデを見ると…
がーん。
斜面のかなりの部分が、横一列になって歩いたとおぼしきツボ足のトレースでずたずたになっている。
登下降に使われるのは当然で仕方ないが、なんでこんな歩き方をするのか…。

画面真ん中から下がBゲレンデ
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それでも両脇にはノートラック部分が多少残っているので、そこを滑ることにしてステップのまま登る。
Bゲレンデの上に来ると、滑降準備をしている2人組の方がおり、挨拶。
すると、そのスキーヤーが、大走りの尾根の向こう側に見える斜面を指さして、「あれが雪崩ですかね?」という。
無線で、1人埋まったという交信を聞いたとのこと。
なるほど、遠目ではっきりとはしないものの、斜面が荒れていてデブリのようにも見える。
ただ、そのデブリが出ている斜面は緩やかで、雪崩が出るようなところには見えない。
このときはどうなっているのかよく分からなかった。
後で、稜線近くで発生した雪崩のデブリがそこまで到達していたのだと分かるのだが。

Bゲレンデを滑り、さらに山荘下に向かうメローな斜面を滑り終えた所から周辺の斜面を観察すると、先ほど滑った大斜面の上、雄山直下のルンゼが雪崩れているのが見える。
他にも1~2カ所、大きくはないがデブリが見えているところがある。
やはり、今日はかなり危険なのだ。
そんな中でも、いつもと変わらずにかなりの急斜面を滑っている人がいる。
こんな日によくあんな所を滑る気になるな、と思う。

山荘に戻ると、大走沢で発生した雪崩は既にニュースになっていた。
皆、無事を伝えるメールを家族などに送る。

そのような状況なので、午後は軽めに室堂山往復ということになる。
私は、せっかく持ってきた細革を使わないのももったいないので、細革を履くことにする。
久しぶりに履く革靴は、もちろんプラ靴に比べればローカットで柔らかいのだが、BCクロカンブーツに慣れた足にはずいぶんゴツゴツとした感じを受ける。
2メートル近い細板ポーラスターは、159cmのアウタバウンズクラウンのようにくるくる回ってはくれず、どうしても大きめのターンになる。
それは仕方ないにしても、BCクロカンに比べて、転倒したりバランスを崩したりといったミスが目立つ。

BCクロカンから急に変えたので慣れていないせいもあるかもしれないし、単純に最近細革で滑ることが少なくなり、特に柔らかい雪を滑った場数がBCクロカンに比べてはるかに少ないからかもしれない。
ともかく、私は、柔らかい雪のコンディションでは、もはや細革よりBCクロカンの方が上手く滑れるし、楽しいと感じるようになってしまっていることを痛感したのだった。

夕食時には、皆、食事が終わっても席を離れずに、ニュースが始まるのを待っている。
真砂岳の雪崩はトップニュース。
映された破断面の大きさを見て、どよめきの声が上がっていた。


<11月24日>
最終日。
朝食時に流れている朝のニュースでも、盛んに雪崩を報じている。
立山周辺では雪崩の危険性が高い状態が続いており、雪の斜面には入るなと言っている。
ここにきて斜面に全く入るなと言うのはさすがにキビシ過ぎる。

当初は、斜度のきついところは当然避けるが、一ノ越方面に向かう予定になっていた。
しかし、室堂山荘を出て出発準備をしているところで、話しかけてきた富山県警山岳警備隊の方から指導が入る。
石木田さんはしばらく悩んでいたが、結局、安全策をとって室堂山に変更。
昨日十分満足していることもあり、参加者一同この決定に全く異存なし。
そして結局この日は、登っている途中でガスり出し、やがてホワイトアウトに。
途中で登高を打ち切り、安全第一で下って、早めの解散となった。

帰りのアルペンルートの乗り継ぎはすこぶる順調で、昼には扇沢に到着。
ご一緒した方々と挨拶して別れる。
皆さん車に向かわれる中、私は一人バスで大町温泉へ。
入浴後、いつものようにバス停前の蕎麦屋で至福のひとときを過ごし、帰路についた。


最後のシーンだけ細革。後はBCクロカンです。



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この記事へのコメント

王子
2013年11月27日 23:35
最高の立山でしたね

来年までに精進して、立山いけるように頑張ります
Seki
2013年12月03日 09:24
王子様
(「王子さん」じゃおかしいですよね、やっぱり…笑)

超亀レスですいません。
今度は是非ご一緒したいですね。
考えてみれば、まだ一緒に滑ったことはないんですよね。
王子様のまほろば参加率は高いので、私が参加率を上げるのが課題かもしれません。

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